幹工務店のスタッフのいちおしの素材やインテリア用品、空間や設計ポイントなどを幅広くご紹介するコーナー。
今回は、当社の取締役で、設計・積算担当の嘉本の「推し」をご紹介します。一級建築士らしいテーマに興味がそそられますね!
私が「距離感」を推す理由
「推し」ということで、何を取り上げるべきか色々と考えたのですが、今回は、家づくりの素材や設備をおすすめするよりも、空間設計における「推し」についてお伝えしたいと思います。
私は住まいを設計する際に、距離感というものを一番重視しています。例えば、居室と水回り、玄関とホール、棚と棚の間・・・など、スペースごとの距離感を適切に取ることによって、住まいの開放感や使いやすさ、動線の便利さなどが変わってきます。では、距離感を適切に確保するには、どうしたらいいのでしょうか。そのポイントをいくつかご紹介します。
天井と床との距離感
住まいの広がりや開放感に関わってくるのが、「天井」と「床」の距離感です。一般の木造住宅で可能な範囲ですと、リビングの天井の高さは2.6mぐらいあるとベストです。ただし、リビングは2.6mだとしても、その手前の廊下やホールの天井高は2.4mが一般的ですので、それで十分だし、それ以下でもいいと思います。ただし、LDKに入った瞬間に開放感を与えられるように、リビングはできるだけ高くして、玄関や廊下との高低差を強調したほうがいいと思います。
収納の棚と棚との距離感
収納スペースにおける、棚と棚の距離感もよく考える必要があります。例えば、パントリーの両サイドの壁に棚を設けたとします。その棚と棚の間のスペースが十分に確保できていないと、しゃがんで棚から物を取り出そうとするとき、頭やお尻がつっかえてしまいます。そのため、棚と棚の間は、1mほどの間隔を確保しておくのがおすすめです。
キッチンと壁または収納棚との距離感
キッチンと壁または収納棚との間は、90cmが基本ですが、お施主さんの使い勝手にもよるため、広いほうがいいという人は1m以上確保することもあります。例えば、背面に冷蔵庫を設置した場合、その部分は収納棚よりも出っ張ってしまうので、若干間隔を広く取っておかなければなりません。人がすれ違うにも90cmは欲しいですし、調理や片付けを二人ですることが多いご家庭の場合は、1mは間隔があると作業しやすくなります。
玄関とホールとの距離感
玄関ドアを開けると土間があり、その正面にホールがあるのが一般的ですが、住まいに広々とした印象を持たせるには、その距離感の取り方がとても大切です。中には玄関ドアを開けると正面でなく左側にホールを設ける場合もありますが、どちらにしても玄関ドアの正面奥の壁までの距離は、最低でも1.8m程度は設けてないと圧迫感が生じてしまうので、注意しましょう。
家族と家族の距離感
最近の住まいは、LDKがひとつながりになったオープンな間取りが主流で、それだけ日常生活の家族同士の距離感は昔よりも縮まったことになります。実は私の自宅も同様で、主寝室以外は仕切りがなく、LDKも子ども部屋もオープンな間取りです。そのため、常に家族全員がリビングやダイニングに居ることが多いです。そういう意味では家族の距離感が近いし、そのおかげでお互いに何でも言い合える関係が築けているのかなと思いますね。子どもは高校生になりますが、思春期といわれる中学生時代も普段通りで、部屋にこもるということはなかったです。
よく、リビングで勉強すると子どもの成績が上がるといわれますよね。実際に、それで頭が良くなるわけではないですが(笑)、家族が集うオープンな間取りというのは、家族の距離感が縮まり、家族関係を円満に保つのにすごくいいことだと思います。
注意したいこと
最近は流行りの回遊動線は便利でとてもいいと思いますが、「回れる」ようにするために廊下を増やしがちになります。例えば、「ウォークスルーの収納スペース」といっても、通り抜けるために物を置かずにおくスペースは廊下と同じで、収納スペースではありません。限られた空間を無駄なく生かすためにも、間取りをよく検討しましょう。